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[voice] 天未線 江川 文誠 氏

 翔の会診療所「天未線」は平成8年の「空と海」と同時にスタートした。青写真段階で用意されていた診療所の名称は「沢庵のしっぽ」であった。
 私自身は高校生時代より障害のある人とかかわり始めた。その当時まだボランティアという言葉すらなかったが、家庭訪問をした時に悲しそうに診察券の束を見せられたのを今でも覚えている。障害児にとって医療は頼りになる存在というより、いやなことを言われ、もう医療としてやることはないとも言われた「にっくき相手」という位置づけであった。
 だから、茅ヶ崎の障害福祉を引っ張っていこうとしていた翔の会においても医療が必要ではあるけれども、あまり口出しをして欲しくないというのが本音だったのだろう。
 医療と福祉は関係ない人からみると近い存在と思われるが、当事者からするとこれがなかなか一緒にやるのは容易ではない。もともとよって立つ文化が違う。
 しかし、どちらかが女王になっても奴隷になってもいけないのだと思う。文化が違うことが最終的に利用者の利益につなげるためにはお互いに緊張のある関係を保ちながらしっかりと自己主張をするべきなのだ。
 何年も前の健康診断の日の事を思い出す。天未線の心電図が故障してしまい、検査を中止しようかという話になったときに、担当職員が血相をかえて「いや利用者に予定を変えてまで今日に合わせてもらったので、今日やってもらわないと困る」と言い張ったのである。私はその真剣な迫力に押されて、当時勤めていた横浜の病院まで心電図を取りに行き事なきを得た。福祉のプロに出会った瞬間であった。
 天未線とは、山と空との境界線の意味である。地に足をしっかりつけながら理想を高く持とうと、沢庵のしっぽに対抗してつけた名前である。当時まだ若かった私の反発からかっこうを付けたのだが、沢庵のしっぽも乙な名前である。なんといっても控えめながら味のある感じが良い。
 晩酌の最後の〆のお茶漬けに欠かせない「最強の沢庵のしっぽを目指す」ことをこれからの天未線のモットーとしようと考えながら、おちょこを傾けている。
この記事は、「翔の会20周年記念誌(2012年11月発行)」の掲載記事を元に編集・掲載しています。


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