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[リレーコラム] VOL.048

ご家族のつらい決断に介護者はどう寄り添うのか

特別養護老人ホームゆるり 主任

小川 ひろの(おがわ ひろの)

 介護の一つ、口から食べることを諦めないという特養でのケアがありますが、食べる事も人の命もどこかで終わりがあり、それを受け入れなくてはならない時がきます。
 ミキサー食と液状の栄養補助食品で食事をとっていた入居者のAさんですが、いよいよ食事や服薬を拒否し、病状自体も悪い状況へ進んでいきました。今後口から全く食べられなくなった場合の選択肢を説明しましたが、ご家族は、胃瘻(いろう)はつくりませんが点滴はお願いします。と言われました。看取りの時が近づいている今の状態で点滴をしてもご家族が望むような効果は期待できません。むしろ害になることのほうが多いのですが、ご家族の気持ちを尊重して身体に負担にならない程度の点滴をすることにしました。点滴期間が長期になると痰や唾液が増え、窒息の危険があるため吸引が必要となりますが施設では夜間帯に吸引できず、体位を変え口腔ケアで取り除くしかありませんでした。身体に悪影響が出て、苦しい思いをするAさんの点滴の中止を伝えると、ご家族は多少つらくても頑張って1分1秒でも長生きしてほしい気持ちがあるようです。また意識のある中で点滴を中止することはAさんに死ねといっているようなもので、命を決定することになると思っていたそうです。ご家族はこんなにAさんのことを大切に思っているのに、自分たちの気持ちを優先していることに気がついているのだろうか?
 ご家族には点滴の効果はそれほど無いこと、今Aさんはご自身の力で精一杯生きておられることを伝えるとご家族はほっとして決心がついたようです。点滴を中止し安楽な生活を送っていた数日後Aさんは亡くなりました。後日挨拶に来られたご家族はあの時決断ができてよかったという言葉でした。
 また、同じ状況で別の入居者Bさんのご家族は本人にとって苦痛なことはやめてもらいたい、苦しまずに見送ってあげたいという考えでした。老衰(ろうすい)ということで、もう家族全員覚悟はできているとおっしゃられ、Bさんが頑張って受けるようなケアは求めませんでした。ご家族の本意はわかりませんが、1分1秒という気持ちではなかったと思います。それでも、決心に至るまでの心中は相当なものだったことでしょう。経過を報告する中でも覚悟の気持ちが揺らぐのは当然のことですが、そのゆるぎないご家族の決断と覚悟は、私の過去の経験と思いがご家族と重なるものでした。
 看取りの選択を迫られた時、誰よりもつらいのはそれまで多くの時間を共有してきた入居者家族です。その時私達ができるのは選択し、ご家族に提示するだけではないはずです。私が心がけていることは、
ご本人、ご家族に質問を受けたら、安心して納得できる答えをする。
ご本人、ご家族が大切にしていることを尊重し自分も大切だと思う。
ご本人、ご家族がしんどいことや困っていること、不安に思うことを最優先して解決できるようにケアする。
 終末期ケアの決断、人生の最後の決断、もし自分の大切な人だったらどうするのか。予後告知などの重大な話や命を左右するようなことを本人に代わって決断するのは、とても苦しいことです。だからこそ、後悔ができるだけ少ない決断ができるように、ご本人、ご家族にもとことん寄り添っていく必要があると思うのです。



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